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シラキ工芸二代目 入江 朋臣
イリエトモオミ
IRIE TOMOOMI
福岡県
八女提灯
提灯職人
八女提灯の二代目は、職人育成の職人。そのリーダーシップに学びあり。
八女堤灯(やめちょうちん)は約200年前から日本の盆提灯の代表で、福岡県の伝統的工芸品の一つです。八女市は、この堤灯作りの材料となる木蝋(もくろう/漆の果実から抽出した蝋)、和紙、骨となる竹、木材や漆といった材料が揃う事から、明治から大正にかけ八女地域全域の産業に発展した。
提灯づくり
よくしなる竹ヒゴを螺旋状に巻いたものに薄い和紙を貼り、中に灯りを入れたもので、絵が描かれている火袋を家の玄関に吊るしたり、仏壇の傍らに置き、夏のお盆シーズンには欠かせない仏具。シラキ工芸では、このお盆の数日間の為に1年をかけて日本全国の盆堤灯を若い職人を中心に作り続けています。
応援数残り10口
衰退原因は、需要低下ではなく生産力低下から
早めの代替わり、24歳の二代目誕生
昭和55年1月盆提灯火袋製造業「シラキ工芸」が始まりました。当然、八女提灯としては新しいほうで、先代は55歳で引退、入江氏が24歳の時に二代目を受け継ぎました。
入江:正直、交代してもらった形でした。初代である父と私と妻の三人でやっていたが、給料は夫婦で8万円。当然生活はきつかったし、やり方を変えなけければ潰れてしまう、苦渋の決断でした。
バブルが弾けた時が八女提灯の需要のピークで、当時は一年中仕事があることが当然、何もしなくても売れていた時代でした。しかしその八女ではその時から高齢化問題は深刻化しており、新しい人材の流入がほとんどなく担い手が不足していたと言います。
入江:需要の減少より、生産力の減少が顕著だったんですよ。受注が来ても納品できない、だんだんそんな状態になっていってました。とはいえ、何の工夫もしてこなかった業界なので当然新しい人材が入ってくるわけもなく、職人や、特に絵を描く内職さんなどもどんどん歳を取っていきました。
そんな状況を改善すべく、とにかく人を雇うことで納品を間に合わせる体制を作りました。
分業という慣例に逆らってみる
これまでは職人を抱えず分業で回すことが慣例でしたが、それで職人が減っていた現状と、幸い需要があったので人を雇用し職人を育ててみようとチャレンジしました。提灯の形は変わりませんが、作り手の年齢層が変わったことで絵柄のタッチ・題材がアップデートされ製品の幅が出ました。
生産ラインと画力のアップで、今までの取引が少なかったところも関わってくれるようになり、事業は順調かと思われました。
その頃から仏壇もモダンな仏壇へと凄まじいスピードで移り変わり盆提灯の出番はほとんどなくなりました。需要の低下がここでようやくきます。さらにそれに対して提灯業界は現代仏壇に合う対応や代替製品を作ろうともしていませんでした。
下請けからものづくりの表舞台へ
入江:元々うちは直接販売ではなく問屋さんやメーカーが取引先の下請けの会社でした。
しかしせっかく若い力が入ってきたのでもっと名前を売り出したい!
もっと現代を生きる人々の生活の中に提灯を取り入れてほしい!
そんな思いから自社のプロダクト開発に踏み切ります。
そして誕生したのが、現代の生活に馴染むミニ提灯「cocoran」4年前から本格的に小売を開始しました。
コロナによりお盆に親戚で集まる行事ごとが簡素化され、大きい提灯より普段使いできる小さな提灯の売れ行きが伸びていきました。小さくなることで技術的にはもちろん難しくなりますが、職人達にとっては従来の盆提灯では現わせない絵を描くということの楽しみが増えています。
小さくても同じ技術を継承することが重要ですから、cocoranが職人を育て、地元の人間の仕事を増やし、若い力をさらに伸ばしてくれています。
提灯のプロから職人を作るプロへ
働きたいと来てくれた素人を一から育て、その方は昨年伝統工芸士に認定されたという。
入江:うちに来てくれた経緯は、知り合いからの紹介や、私がよく行くカフェの店員だった子をスカウトしたり、バラバラです。
谷マチ:なぜ全くの素人を雇うのですか?
入江:会社色に染めたいからです。職人の教えに対して素直でないとやっていけない業界だと思うんです。
だから新しく入る子は必ず一番年下になるように雇用し、伝統工芸品へのイメージをどんどん若くしようという狙いがあります。
若者の人となりや個性を無視しては、次世代の職人は育たないと考えます。
職人が自分の頭で考え、健全な心を持って作る。提灯の心安らぐピュアな灯りはそうして生まれるのが理想です。育成に最低3年、10年たってもまだ練習が必要な世界です。
職人たちの成長と共に、個性的な提灯が生まれる環境と安心して長く提灯と向き合うことのできる環境を作ることが私の最優先事項かなと思います。
改革派の入江氏、なぜ伝統を残したいと?
手書きの温かみがある絵、完成度、全てに魅力があったからです。八女提灯は、八女の和紙、八女の竹など八女の伝統産業を使って作る伝統産業です。八女提灯の発展が全ての材料の発展につながるのです。しかしそこにただあぐらをかいているだけと化石になってしまいます。今の瞬間は上手くいっていたとしても、危機感を持ってこれからも進化をさせていくための挑戦に応援をして欲しいと思います。谷マチからメッセージ
入江氏の人柄にみんなが集まりついてゆく。それがよく分かるエピソードと雰囲気をお持ちでした。職人さんも活き活きと主体的にお仕事をされている。一番下の職人さんは先輩を尊敬し、師匠と呼ぶ。また展示会の仕切りを任される村山さんの社交性は群を抜き、仲良くなりたての他の産地の職人を我々に紹介してくれるバイタリティ。是非、シラキ工芸さんに八女の盛り上げ役になり発展させて欲しいと願います。