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金井畳店四代目 金井 功
カナイイサオ
KANAI ISAO
東京都
畳
畳職人
和室が消えても畳は無くさない、江戸っ子の心粋。
台東区浅草橋。
祭りと職人と人情味の溢れるこの街で、長らく看板を守っている畳屋さんがある。
畳と家族、そして町を愛する「金井畳店」。
職人には珍しい優しい笑顔の四代目がプロダクトの力で畳の未来を作ります。
畳を縫う姿がカッコよくて、
父の働く姿や職人さんの畳を縫う姿がカッコよくて、その光景を見るのがたまらなく好きでした。
「四代目になる」ことを目指すようになったのは必然でした。
金井畳店は下町、浅草橋の地で明治44年に創業いたしました。
畳の職業訓練校にて3年間の厳しい訓練を経て、店に戻ってきた私を待ち受けていたのは訓練校時代をはるかに超える厳しい修行生活でした。
持ち前の根性でひたすら畳に向き合い続けあっという間に17年が経ち、平成27年に金井畳店の四代目に就任しました。
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老舗ではなく「師似せ」へ。
消えゆく畳
近年の住宅構造の変化によって急速に需要が減って来た畳。特にこの東京や都心部はマンションが基本。分譲タイプなら和室は高額なオプションであるため、ほとんど選ばれないといいます。金井氏は、今後はもはや畳の存在を知らない方も出てくるだろうと危惧しています。
”うすいけどやわらかい”金井の置き畳の誕生背景
需要低下の中でも、普段の生活の手軽に敷き、持ち運ぶことのできる「置き畳」が出回ります。
通常の畳の厚み5センチに対して取り扱いを容易にするために2センチにまで薄くされた置き畳はとても堅く、まるでフローリングのようでした。
我々は置き畳の良さである薄さ、手軽さを担保しながら本畳のようなクッション性を持つ製品を作るべく畳床(畳の中身)となる芯材を一から見直しました。
調湿機能の優れた梅炭シート(梅のタネを炭にして刷り込んだシート)やケナフ(ヤシの繊維)ボードを使用し、特殊な不織布を縫い合わせ、全て天然素材で柔らかさを追及。
さらに通常の畳に比べて薄いことで畳自体の呼吸ができるのでメンテナンスも簡単。
そうして誕生したのが「金井の置き畳」。
厚さわずか2cmで本畳のクッション性を実現し「今までにない畳床」を用いた金井の置き畳は、日本の伝統技法と最新素材技術を融合した独自製品として実用新案登録に至りました。
金井:この畳ができてから驚いたことがあるんです。私はてっきりこの畳を絨毯のように一、二枚置いて使う人が多いと思っていましたが、今ある部屋の全面に当てはめて作りたいというニーズが意外にも多かったんです。
「改装せずに和室が欲しい」つまり現代にもまだ畳の可能性があると、希望に満ち溢れました。
金井:通常の和室は畳の5センチ分の掘り込みが必要なので、専門の大工工事が必要です。
しかし我々畳屋が持つ最大の武器は高度な採寸技術、お客様のどんなニーズにも柔軟に対応できますし
特に置き畳は従来の畳よりも汎用性が高く、和室仕様の改装が不要になり、低価格で楽しんでいただけるという良さもあります。
フィロソフィー
金井:私はひたすらに手で縫うことに惚れ抜いています。量産品は熱でノリ付けをしますので作るのは簡単ですが、経年した際には使い捨てです。縫製にすることで、表面のゴザの部分を新しく貼り替えればまた使用できるという余地を残しています。
金井家には、先代に似せる「師似せ」を目指し、代々守られてきた「三惚れ精神」という伝統があります。
一「畳に惚れ込むこと」‥‥代を守る者にとって、畳とは「惚れ抜く仕事」
二「町に惚れ込むこと」‥‥地域を愛し、色濃く根付く下町の心意気を次の世代へつなぐ
三「妻に惚れ込むこと」‥‥仕事だけではなく、自身の周りにいる人も大切にする
この三惚れ精神が我々を突き動かし、四代目として今日も先代たちが紡いできた「心と粋」を胸に畳職人として誇りを持っているのです。
課題
毎年、畳屋が廃業しています。廃業したら一店あたりの仕事が増えるのではと思いきや、店の廃業に合わせて畳の注文をやめる=畳を使わなくなるという状況なのです。金井氏は畳屋の廃業は自分のことのように悲しいといいます。現代にフィットする畳の開発と演出、そして海外に向けた文化の発信をしていくことが課題であり、残されたものの使命であると考えています。谷マチからメッセージ
三惚れ精神が溢れ出ている金井氏。畳はもちろん、原料であるイグサの産地に出向き、地域の祭りや他の職人との取り組みに尽力され、奥さんのことをいつも想っている。そして我々谷マチにも。取材時に、身内の不幸、新幹線へ携帯を忘れ、鳥の糞に見舞われた筆者を暖かく迎えて下さりました。何より金井氏のお人柄に惚れた谷マチでした。