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陶芸家 日ノ出窯 岩崎 正雄
(梅花皮)

日ノ出窯 岩崎 正雄

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日ノ出窯 岩崎 正雄

イワサキマサオ

IWASAKI MASAO

滋賀県 陶芸家 梅花皮

偶然の産物、龍爪梅花皮

梅花皮(かいらぎ)というのは、陶器の中で、焼成が不十分のため釉薬が溶け切れず鮫肌状に縮れたもの。その不完全さゆえ、茶器では一つの景色とされ賞美の的である。
その梅花皮を専門に作陶するのが、岩崎正雄。

彼の梅花皮は、他の梅花皮と一線を画す。縮れが大きくまるで龍の爪の跡のよう。
そう、この龍爪梅花皮(りゅうそうかいらぎ)は岩崎正雄にしかできない技なのだ。

そのルーツとは?

岩崎正雄は、埼玉県出身。そして特に陶芸家の家系ではない。
修学旅行で見た清水焼が帰ってもずっと脳裏から消えず、卒業後あてもなくヒッチハイクで京都へ。炭山の川島師匠のもとで陶芸を学び始めます。その後、岩崎氏は独立し、自分の窯を持っていました。その時に、趣味の釣りで何度も訪れていたのが、この日ノ出窯のあるあたり。風景にほれこんで、周辺で移転先を探していたところ、この古民家が見つかりました。

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釉薬で偶然を操る、奇跡の技術

白いの陶器を作れ


独立したころはバブル期で、焼き物も作れば売れました。
しかし陶磁器の生産は1990年代がピークで、その後は減り続けています。主な原因は、生活様式の変化や100円ショップなど安価製品の登場などです。

京焼・清水焼の製品を中心にしていた日ノ出窯も例外ではありませんでした。
そんな中、釉薬の扱いに自信のあった岩崎氏は、打開策として新しい陶器に取り組みます。
それは不可能とされていた「白地の陶器」
通常、白地といえば磁器。磁器は石であり白磁で出来ますが、陶器は土。土は茶色いのでその上に白い釉薬が乗らないし、縮みと言われるひび割れが起こる。しかしどうしても綺麗な白地の陶器を作ってみたい。
そもそも、岩崎の師匠は釉薬にものすごく力を入れていた方で、
「自分の釉薬を作って勝負をしなさい」
その方針のもと、師匠がなくなる前日まで一緒に新しい釉薬の調合をしていたほど。
その後何度も試作し何度も釉薬の調合を変えても、美しい陶器にとって邪魔になる縮み(梅花皮)ができてしまう。
「そんなに“縮れる”のならば、もうわかった。好きに縮れてくれ!」と、その時の言葉で気付いたのです。「逆に全体に綺麗な縮れを起こすのも美しいのでは」
そう発想を逆転させて、梅花皮向きに釉薬を配合しました。
そうやって誕生したのが、龍爪梅花皮です。

しかし狙って縮れを起こすこともまた難しいことで、安定して理想の形を作り出すことができるまでに随分と時間がかかったと言います。

岩崎:花瓶や茶器など立ってる作品は強く縮れるというのはよく言われますが、お皿などの平たい作品に対して強く縮れさせられるのはうちだけだと評価をいただいています。

「岩崎正雄の梅花皮はまさに偶然の産物、強い縮れを安定して出せるのはこの人だけですが、同じものは一つとしてありません。だからこそ龍爪梅花皮は誰にも真似できないのです。」
と妻の美知子氏が教えてくれました。

赤い梅花皮を作れ


岩崎:ミッソーニってご存知ですか?イタリアのアパレルブランドなのですが、
私の茶碗に感銘を受けてくれたそのミッソーニの日本人デザイナーの方がおっしゃったんです、「この縮みに赤を入れた梅花皮がほしい」と。
その一言から制作が始まり完成までに3年程かかりました。

谷マチ:その赤は何の材料で描いているのですか?
岩崎:描いてないんです、赤も釉薬なんですよ!
谷マチ:え!?どういうことですか?
岩崎:この梅花皮は、これまで土に黒っぽい釉薬を塗り、その上に白い釉薬を重ねてその表面の白い釉薬だけを縮ませて梅花皮を表現するわけです。だから、下の黒い釉薬を赤い釉薬に変えないといけない。
ただ、赤は色々難しさがあるんです。
単に赤い釉薬を作って塗っても色彩が定まりませんし、それ以前に赤い釉薬の材料たちは他の材料に比べてコストがとてもかかるんです。
それもあって赤い梅花皮を作っているのもうちだけです。

岩崎正雄のいない未来


(ここまでのお話で岩崎氏の技術が属人的すぎたため、思い切って踏み込んだ質問をしました。)
谷マチ:仮に岩崎さんが亡くなったらこの技術はどうなるのですか?
岩崎:実は、伝承する技術は釉薬だけなんですがね…
他の素晴らしい陶芸家も意外とろくろ体験などで食い繋いでいる人多く、職人としてやるせない気持ちになると同時にそんな未来しか待っていないのだとしたら残念ですが僕の代で終わるしかないのかなとも思ってしまいます。

美知子:私としてはこの素晴らしい技術を未来に継承したい気持ちが強いです。だから後継者をマッチングする取り組みに載せてもらい、何名か手があがった中に一人だけいい方がいたんです。
岩崎:ただきてもらうからには安定した収入を確立した上で後継者候補を雇わなければいけませんが、
なかなか給料もすぐ出せないし、時間を考えると焦りしかありませんでした。
人を雇うぐらい売れていたら、息子にも手伝えよって言えたけどそうじゃなかったから。

美知子:そんな中での谷マチさんの取組は本当にありがたいし、この技術を残すための環境整備を行なっていきたいです。なお、救いの手を選別できているうちはまだいいほうです。きっと日本全国そういう作り手がいっぱいいると思います。

  • 古民家を改装した日ノ出窯

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  • 白い陶器と格闘の日々

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  • 当時の苦労を語る岩崎氏

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  • 誕生した龍爪梅花皮

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  • 岩崎の釉薬を操る技術

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  • イタリア人の要望で生まれた赤い梅花皮

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  • マグカップ

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  • 平皿

    平皿

  • 一輪挿し

    一輪挿し

作り手からのメッセージ

私は龍爪梅花皮を世に問うため活動をしてきましたが、昨今、梅花皮に限らず伝統産業の衰退はこの目にも見えており、『谷マチ』さんの待ったなしの活動こそが解決策だと感じています。
今までも取材というものはたくさん受けてきましたが、中々取材から課題解決に繋がることはありませんでした。そもそも日本の伝統産業が衰退している現状を伝えることがほとんどの目的で、課題解決に向けて具体的に動いてくれはる方というのは『谷マチ』さんが初めてです。伝統工芸に携わる方全員に「絶対諦めたらあかんで!」と声を大にして伝えたいです。

谷からのメッセージ

『谷マチ』が芸術家の皆様にできる1番の仕事は資金調達です。継続的な収入を得ることが難しい上に、継続的な収入がないと存続が難しい世界だからこそ、我々『谷マチ』が全速力で未来の美しい日本を保守いたします。皆様のご協力をお願いいたします。

日ノ出窯 岩崎 正雄
滋賀県 陶芸家 梅花皮

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