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組子細工 濱中伸也
(土佐の匠)

濱中伸也

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濱中伸也

ハマナカシンヤ

HAMANAKA SHINYA

高知県 組子細工 土佐の匠

大工がつくる伝統工芸

高知県宿毛市。ほぼ関西である徳島のすぐ横、というくらいの感覚で京都から車を走らせると、6時間以上。なんでも東京から公共交通用いて行く街としては最も遠い街だという。
太陽が反射してダイヤモンドのように輝く四万十の清流を越えたところのこの街に、組子細工アーティストの濱中伸也という土佐の匠(令和3年認定)がいる。
実は彼の正体は「大工」である。
大工でありながら伝統工芸の名工と謳われる濱中氏、その職人とアーティストが共存する部分にフォーカスする。

組子細工(くみこざいく)とは

組子細工とは、釘を使わずに木を幾何学的な文様に組む木工装飾をいいます。 細かく切り出した木に溝・穴・ホゾ加工を施し、鉋(カンナ)や鋸(ノコギリ)、鑿(ノミ)などで調節しながら1本1本組みあげる繊細かつ気の遠くなる技術です。
飛鳥時代、仏教が百済から伝来し、それと共に寺院建築に必要な職人、道具、技術も伝わってきました。その中の一つが組子細工と言われています。
約1400年の長い年月をかけて、職人たちの伝統を守る心と情熱、あるいは消費者の美意識によって、現代まで引き継がれてきました。

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「やっていて楽しい」を伝えることが、伝統工芸の発展の近道

「俺に教わるな、まずは他所で学べ」


大工である父の後を継ぎ、濱中建築の二代目になった伸也氏。父の方針によって、そのスタートは同じ宿毛市内の別の大工への弟子入りから始まります。
弟子時代はもちろん親方の指示で動きます。親方に「これやっちょけや」と言われたことだけをひたすらにやる7年間で、木の基本を身に付けたわけですが、弟子を卒業して濱中建築に戻り、いざ自分で考えてやる立場になった時に、「今の大工としての在り方」や「現代の主流な家の造り方」に違和感を感じるのです。

濱中:丸鋸(まるのこ/電動工具)でコンパネ(薄い木材)を切って、鉄砲で釘を打ち、ボルト閉めて、石膏ボード打って…
僕は本来、僕にしかなれない職人になりたかったはずが、今の大工は道具があれば誰でもできる。職人と作業員との境目が曖昧で、“僕は一体どっちなんやろう”職人の気でおるけど、やりゆうことは結局みんなと同じやな”と、心に引っ掛かりを持ったまま日常を送っていました。

そんな時、何気なくテレビを見ていると組子細工が目に飛び込んで来ました。

濱中:まさにビビッときたというか。一目惚れでした。

木を切り出すという点で大工と繋がるものもあるが、“これは職人にしかできんぞ”と直感で思ったといいます。すぐにネットで調べてみましたが、当時のネット環境は今ほど豊かではなく、やり方も載っていませんでした。
リサーチも視察もなし。「大工の感性で目に映ったものを再現してみよう」これが濱中の組子細工の原点です。
僅かな情報と記憶を頼りに試行錯誤を繰り返しながらやっていくうちに、少しずつ形になっていきました。

自己流?いや、正確無比の大工式の組子細工。


組子細工のロジックは、格子状に組みつけた桟の中に「葉っぱ」と呼ばれる小さな木の部品を様々な形にはめ込むことから展開します。
隙間が多いと桟の強度も弱くなり、葉っぱ部分が外れやすくなるためパーツを切り出す技術も必要。
仮に1m×2mの大きさに組みあげる場合、3496個のパーツが発生します。
機械化でやっているところが多い中、美しい組子は木目や節、色や割れなどの見極めが必要であることから、濱中はそれを一つ一つ板から切り出し、突き合わせる面は正確な45°に手作業で加工します。
これはやはり大工の技術が成せる技だといえます。

一方、デザインはまずお題を決めた上で、独自のデザインを施します。
濱中:僕は絵は苦手です。だから比率を元に計算で作品を作っているのです。
谷マチ:なるほど、建築の設計のようですね。スパンやピッチを飛ばす要領で?
濱中:ええまさにそうです。加えて、パッと見て美しいと思えるものには根拠があると言われています。例えばモナリザやパルテノン神殿など。それが黄金比や白銀比(1:√2)と呼ばれる比率であり、僕が組子細工のデザインに投影する技法です。

一般に白銀比は、平安京の碁盤の目に、法隆寺。スカイツリー、コピー用紙からドラえもんに至るまで細胞レベルで美しいと認識するテッパンの比率なのです。

濱中氏の組子の特長として欠かせないのは「曲線美」。組子細工の文様の中に大胆なテーマとなる絵柄を重ねます。直線であるパーツをちょっとずつ到達点をずらしながら、あくまで直線で曲線を表現した絵柄はどれも美しく、大工ならではの加工技術と緻密な白銀比設計の賜物なのです。


課題=谷マチの原点と重なる


組子細工に限らず、伝統工芸品は非常に価値の高いものですが、決して儲かる仕事ではありません。一つの作品を作るのに膨大な時間が必要だからです。加えて一人前の職人を作り上げる時間もです。従って職人を目指す人が少なく、いたとしても僕には弟子を取る余裕はありません。それが伝統産業の課題と語ってくれた。
これはまさに谷マチの起点になった筆者の実家(相撲の化粧まわしの作り手:日本刺繍)が廃業した理由と同じです。
納めれば高い価値に代わるものの、手仕事ゆえの低い生産力が、明日の収入を遠ざけるのです。

  • パーツとなる木材

    パーツとなる木材

  • 木材を細くカットし寝かして水分を抜く

    木材を細くカットし寝かして水分を抜く

  • パーツを切り出す

    パーツを切り出す

  • 均一に切り出したパーツ

    均一に切り出したパーツ

  • 45°のカットの光景

    45°のカットの光景

  • 延々と組み上げる

    延々と組み上げる

  • 建具アート

    建具アート

  • 建具/障子

    建具/障子

  • 額縁

    額縁

  • 建具アート

    建具アート

  • 欄間

    欄間

  • アート作品/ドーム

    アート作品/ドーム

結局最後は好きなことやりゆうだけ―

僕は組子細工を仕事と思ってやっていません。
誰しも楽しいことをやっている時が一番輝くはずやし、それを伝えるために作品とも向き合ってきました。組子細工を見てもらえれば、好きやないとできない技術だとわかってもらえるはずです。今後は観賞用作品だけでなく、家具や建具、内装などにも力を入れていきたいので、是非応援してください。

谷マチからメッセージ

組子細工に一大産地はありません、あらゆる地域に組子細工が存在します。
同業も組合もなく、各地の職人が技術で競う。おそらく作り手皆が、組子細工が楽しいのでしょう。だからこそ産地がなくても各地に職人がいるのです。
「努力する人は、夢中な人には勝てない」といった人がいます。
やっていて楽しいということを伝えることが最も伝統工芸の発展に繋がる近道なのかも知れないと学びました。

濱中伸也
高知県 組子細工 土佐の匠

濱中伸也

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