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苔培養農家 あきもとなおみ
コケバイヨウノウカ アキモトナオミ
AKIMOTO NAOMI
広島県
苔農家
苔の養殖
公務員からの華麗なる転身 日本の美を作る農家
広島の山間部。季節は晩秋だが、1月のように空気は澄んで霜が降りている。
ここに日本の美に欠かせない、1人の一次産業従事者の女性がいる。
一次産業といえば、農業、林業、漁業?
彼女は、日本庭園やお寺、盆栽に欠かせない日本の美「苔(こけ)」の農家である。
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苔農家とは?
歩みと転機
山口、萩のみかん農家に生まれ、一次産業を身近に育った。
学生時代、海外視察でアフリカ,ザンビアの生活実態に直面し、住民サービスや行政そのものがいかに大事かを痛感。
卒業後は広島市役所にて経済局や福祉の業務に従事した。
育休を機に、「自分にしかできない仕事で役に立ちたい、自然に囲まれた暮らしを守りたい」そういう意識が芽生えた。
周りを見渡せば、お祖父さんが作った庭園に自生した良質でボリューミーな天然苔。「これこそ資源だ」と深い苔の世界に入っていく。
苔の世界に足を踏み入れると、まず苔農家の数が非常に少なく供給が追いついていないことを知ります。尚且つ、品質も悪くなっていると。こうなると使命感と向上心が湧き出し、研究と試行錯誤を繰り返します。
養殖とは?
そもそも苔とは、植物というより生き物。仮根(かこん)といって通常の根は持たないため、根を張る植物ではない。その代わりに胞子(ほうし)を飛ばして繁殖するため生き物といったほうが近いのです。種類も何千とあり、それぞれ向き不向きの気候や環境がある。商品としての苔は、大きく天然苔と栽培(養殖)苔に分けられるが、苔はお魚と違って養殖のほうが高品質。なぜなら、苔は気分屋で空気中を飛んでいる胞子がくっつきたいと思う場所に定着をする、つまり天然苔は住み慣れた気候や環境を取り上げられ、その後違う場所へ定着するよう植えてもなかなか思うようにはいかないのです。その一方で、養殖苔はタネ(天然苔の一部や先っぽ)から撒き、時に土を使わず育てるなどその他あらゆる手法を意図的に行い、耐性を持たせて出荷するため、環境変化に強くなるというカラクリなのです。
持続可能な苔栽培
そのタイトルこそが、あきもとなおみのこだわり。
というのもタネとなる天然苔をその都度移植していては、無論、苔は減っていき自然を傷つける。そこであきもと氏は、苔の先端のみを刈り取ってタネ苔を確保する。そうすると天然苔はまた成長してくれるため持続可能なサイクルが生まれます。
またイマジネーションも駆使します。例えば、単純にタネ苔を撒いて育てようとするのではなく、周辺の唐松の枯葉をタネ苔と混ぜて撒くことで苔により自然な環境であると感じさせると共に、苔同士や土とのツナギの要素もあります。
または、芽出しの前後で培養場所も変えるます。
芽出し前は山の環境で絶妙な湿度、風、陽当たりによって発育を促し、芽出し後は、畑など平地に移動し過酷な環境で耐性を鍛えます。
さらには土も面白いものを使用する。
飲料水の濾過で出た捨てられる泥。その泥に昆虫が集まっていることから、栄養やミネラルが凝縮しているのではと発見され製品化された瀬織(せおり)という土。この瀬織も地場広島の企業のSDGsから生まれているのです。
養殖苔も、元は天然苔。生き物であるためその栽培に使うものも天然由来であることに越したものはないわけで、あきもと氏は、「使っていて気持ちがいい」と爽やかに話してくれました。
課題、資金使途
課題は、安定供給と品質です。生産者として、育てた苔がどこへ売られても耐えられる強い苔を作るため考え抜いた結果、ビジョンが生まれた。
それは「朝霧」と「月明かり」を利用する育成。
日中は陽を遮り、夜間から早朝まで解放できるようなテントシステム。「これができれば安定供給の確率が上がる」とあきもと氏は自信を覗かせます。
谷マチからメッセージ
日本庭園はインバウンドの観光資源であり、日本文化の中心の一つです。苔は作庭に欠かせないものとして、茶道や禅とも密接に関係し、文化人の嗜みまたは和風の象徴ともいえます。
あきもと氏はその苔を、皆が綺麗に簡単に使えるように、強い苔を作っています。
その挑戦を支えてください、生命力の強い苔が日本経済も強くする気がしませんか。