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箔置師 中澤幸広
ハクオキシ ナカザワユキヒロ
NAKAZAWA YUKIHIRO
愛知県
名古屋仏壇
金箔加飾
伝統産業のSDGs
名古屋仏壇
派手、豪華、名古屋にそういうイメージを持つ方も多いのでは?
その背景の一つが名古屋仏壇。豪華な装飾と黄金が伝統として受け継がれてきました。
名古屋仏壇は八職(木地師、荘厳師、彫刻師、塗師、蒔絵師、外金物師、内金物師、箔置師 ※実際には天井師、呂色師、仕組師を入れた十一職)と称される職人たちの、個々の技術を集結させ作り上げる伝統工芸の集大成。
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再起の希望と最高の技術
金箔の技術 箔置師(はくおきし)
箔置の技術とは「やはり薄い金箔の扱いに尽きる」と語るのは箔置師の中澤幸広氏。
その薄さはなんと0.0001mm(1ミリの100分の1)。
一枚ずつ取るのも難しく、全国の金箔を扱う職人も中澤氏の教えを乞う者も多いといいます。その技術は仏壇製造において、ものすごい数の金箔貼りの経験数に裏打ちするもので、「早く綺麗に」という基本が嫌でも身についたそうです。
その結果、中澤氏は経済産業大臣認定の伝統工芸士となります。
需要の低迷
名古屋仏壇の特徴のもう一つ、それはその大きさ。2m以上のものもあるのです。
「まくり」と呼ばれる扉を備え、台座が高いのもその理由。
かつては、材料である岐阜の良い檜を名古屋まで木曽川で運んでおり、木曽川流域で発展していったため川の水害に備えて台座が高くした職人たちの知恵なのです。
しかし、この大型であることが段々と現代の家には馴染まなくなります。さらにはマンション化や核家族化、習慣の変化により一気に需要がなくなっていき、ついには仏壇店の年間の販売が一台のみとなってしまったというのです。
意外な再起は、女性の目線から
販売は減った一方で、近年はたくさんの処分の依頼が舞い込みます。
役目を終えた仏壇。廃棄するには惜しいほどの細かく美しい装飾。
特に、仏壇に吊るされる装飾である「瓔珞(ようらく)」というパーツがあります。
妻の由美さんは、「よく見ると何だか見たこともない形で美しい!」「何か使えないかな?」と気付きました。
汚れを落とし、幸広さんに金箔を貼り直してもらい、由美さんご自身でアクセサリーとして使い始めます。
ある日夫婦で外食をしていると、とあるギャラリーの女性オーナーの目を惹くことになります。
「さっきから気になってたのですが、それなんですか!?よく見せてほしい!」と。
その方は、画壇のパーティーに付けていくアクセサリーを探していて、本物の金の輝きであり軽量で他と被らないオリエンタルな瓔珞の雰囲気にすっかり魅了されてしまいました。
それがきっかけとなり、「金箔工芸アウレプス」という廃材からのアップサイクルアクセサリーが生まれました。
幸広:妻と始めたこの活動が、改めて職人の立場から「伝統工芸の未来」を考える、良いきっかけとなりました。以前のように仏壇が売れなくなった今、僕ら職人が考えなければいけないのは、長い歴史の中で磨き上げられてきた職人の技を、どうやって次の時代に受け継いでいくか。職人一人ひとりが次の時代につながる道を模索し、新たな一歩を踏み出せたら、名古屋仏壇が築き上げてきた歴史や技は、この先もずっと残っていくのだと思います。
今後は?
仏壇を廃棄される方に思い出として自分の家の仏壇をアクセサリーやアートに変えてあげたい。アクセサリーの他、シャンデリアなど大きいものにも展開していけたらより文化を残していけることになる。手先が器用で、現在は別の製造業に身を置く息子さんもこの仕事に関心を持っており、育成や技術継承も考えながら販路拡大を頑張っていきます。谷マチから
仏壇という、住宅様式や文化の変化によって途絶えかけている“しきたり”の中にある技術は、伝統として継承されるべき日本の宝であると考えます。妻の由美さんがアップサイクルアクセサリーのブランド名に「金箔工芸」と入れているのは、「仮に名古屋仏壇がなくなっても、名古屋の金箔技術が後世に残るように」という想いが込められています。